避妊手術にもうひとつの選択肢
腹腔鏡手術
避妊手術は動物病院でよく行われる一般的な手術です。
手術方法は背中側に位置する卵巣子宮をおなかに開けた傷口より引っ張り出し手術を行います。避妊手術で発生する痛みの原因は大きく2つに分けられます。
1つ目は傷口の切開の痛み。2つ目は卵巣を体外に出すために卵巣に付着している靭帯を引っ張る痛みです。一般的な開腹手術でもできるだけ傷口を小さく手術を行うため切開の痛みに大差はないかもしれませんが、傷口を小さくしようとすればより靭帯を引っ張る必要性が出てくるため痛みが強くなります。靭帯の痛みは鎮痛剤でコントロールをしていても術中の心拍数、血圧が上昇しやすいことから痛みの大きさを感じることが多くあります。その痛みが術後の回復に影響を与える一因と考えられています。
今回当院ではもうひとつの選択肢として腹腔鏡を用いた避妊手術を行うことが可能となりました。腹腔鏡手術は硬性鏡というカメラと鉗子を使うことで3mm~10mm大の傷が3か所で手術を行うことができます。おなかの中で手術を行うため卵巣を引っ張る必要性がなくなることで靭帯からの痛みを減らします。さらにおなかの中で手術を行うため臓器の乾燥もおきず臓器の回復が早いことも知られています。よく行われる手術だからこそ痛みを減らし、身体への負担を減らすことができる方法を一度考えてみてはどうでしょうか。
卵巣と子宮の解剖学的な位置
腹腔鏡手術のメリット、デメリット
メリット
①傷が小さい
②術中、術後の疼痛が少ないため回復がはやい
③癒着が少ない
④血管も目視できるため出血確認も可能
⑤小さい傷でおなかの中全体を見ることができるため他の検査、手術の併用も可能
デメリット
①開腹手術よりも費用がかかる(通常の開腹手術より2万円追加費用がかかります)
②手術時間が延長する傾向がある
③お腹を炭酸ガスで膨らませる必要があるため腹腔鏡下手術に特異的な合併症がありうる